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1997年3月15日

富士の原風景から日本の景観再生へ



1997年3月15日 環境緑化新聞

環境を創る 景観を守る “共生時代”を生きる企業

 近年、生態系などに配慮した環境共生資材や技術へのニーズが急速に高まっている。これに対し企業はどうとらえ、どのように対応するのか、その動向を追う。

ナチュロックというネーミングはナチュラルとブロックの造語だ。ブロック表面に自然石と砂を埋め込んだ、文字通り自然と人工の調和を目指した環境資材として急成長している。
「ナチュロックはコンクリートブロックに代わるものではなくて、従来の間知石に代わるものとして理解してほしい」と日本ナチュロックの佐藤俊明専務は強調する。
このナチュロックの開発は、20年ほど前にさかのぼるという。佐藤専務によれば当時富士山周辺でも開発により無機質なコンクリートブロックが多用され、景観が損なわれつつあった。これに違和感を持った氏が考えたのが、自身の原風景である富士の大地で採れる溶岩をブロックに埋め込み、景観と調和させるというものだった。
1985年に落石事故の相次いだ富士山登山道の土留め材として、初めて本格的に採用された。一ヶ月という短い工期で可能なうえ、なおかつ周囲の景観に調和するという特徴が認められた形だった。その後、山梨県、環境庁などに評価され、次第に湖周辺や河川の護岸資材としても導入が進んだ。
そして開発当初の85年には690個にすぎなかった出荷量も5年後の90年には15万個と急伸し、同時に親会社の向上とは別に山梨県西桂町に専用工場を建設。93年には全国のブロックメーカー23社と技術提携し全国展開を開始し、96年には80万個、グループ(30社)全体では160万個に達するほどの成長ぶりだ。

  1. 地場の素材生かし

 ナチュロックの特徴は、強度や施工性に優れるというコンクリートブロックの良さを生かしつつ、@表面部分が天然の砂と石で覆われており、コンクリートがまったく見えず自然な景観が生まれる、A砂と石で覆われたブロックの凹凸が生物の生息空間となる、B施工方法、歩掛かりは従来の積みブロックと変わらず、天然間知の風格を持つ伝統的な石積み広報である―などを兼ね備えた複合資材であるという点だ。
さらに、同製品の特色はこれら機能面に加え、可能な限り地場の素材を採用するという環境づくりの思想性にも強く現れている。当初は溶岩ブロックしかなかったが、現在では神戸御影石や群馬県産の四万石など多様な地域の素材、伝統様式を取り入れているのだ。
「本当の景観や生態を守るためには、その地域で採れた石を使わなくてはいけない。その地域にある素材を大切にし、その地域に返してやる。建設資材はともすれば画一的になりがちだが、それぞれの風土と用途に合わせて上手く使い分けなくてはならない」と佐藤専務は強調する。これも提携メーカーを全国に持つことによって可能になったのであり、急成長の要因の一つといえそうだ。

■生態系ブロック
また当初は「溶岩ブロック」と呼んでいた製品も、2年ほど前から「多孔質生態系環境ブロック」と名称を変えた。これは溶岩という多孔質な素材が生物の生育を助けるということは分かっていたが、「10年以上経って、あらゆる施工箇所で自然な環境が再現されるなど実績が各地で認められてきた結果」という。この実績を背景に『生態系』という言葉を前面に打ち出すことで「製品がより受入れやすくなった」とも言う。

■新たな産業へ
建設省では昨年、今後の河川改修にあたり全面的に多自然型河川整備の導入を打ち出すなど、環境の質を重視する施策へと変わりつつある。こうした中で、同社では、昨年12月に東京本社を港区赤坂に移転し、今年3月にはこの新事務所にナチュロック製品のショールームがオープンする。

  韓協製品のパイオニアとして今後どう展開していくのか。「役所、コンサルタント、施工業者、そして地域住民との話し合いや応援を受けながら、環境のための21世紀の新しい複合技術を開発し、環境づくりを牽引していきたい」と佐藤氏は語る。そしてコンクリート産業はもちろん、「『景観・環境産業』という新たな枠組みを起こし、伸ばすことで、将来の日本を背負って立つ企業になりたいですね」と、夢はますます大きい。