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1997年7月1日

道ばたの草木や農家の余った苗が主役 ニッポン式の新潮流 雑草ガーデニングのススメ



世界はガーデニングブームである。
 元来熱心な欧州以外でも、アメリカでは園芸人口が8,000万人に上り、廃刊した雑誌「HOUSE&GARDEN」が復刊に成功した。また、意外や中国は’99年に、インドも近い将来、国際花博覧会を開くことを決定。日本でもイングリッシュガーデンが大人気で、園芸は「ガーデニング」へと見事変身した。
 ただ、どんなブームにもあるように、これに対抗する動きも生まれている。
 2月にシアトルで行われたフラワー&ガーデニングショーでは、原種の野草を育てることが虫や鳥を守ること、という志向が強くなり、庭で育てる蜂の巣キットが発売された。日本でも、珍しい山野草ではなく畔や畑の“雑草”が、ガーデニングの主役に注目されている。
「ハーブだって地中海の雑草でしょ」というのは、2年前銀座に開店した野草専門店「司」の庄司勝子さん。「司」は十数件の農家と手を結び、形が悪くて出荷されない野菜の苗や、休耕田に咲く花などを直送してもらっている。
「イギリス式が人気だけど、日本の風土に合うのかしら。イギリスは冬が長くて出在任グを第一に考える国だから、春にいっせいに花を植え代えてしまう。日本には四季のおかげで花が枯れても葉の変化を楽しめる野草が多いし、植え代えも必要ない。虫にもそれが一番」
また、ビオトープとガーデニングを複合させた、「ビオガーデン」というコンテナガーデンも新発売されている。これは天然溶岩に摘んだ野草と水を組み合わせ、虫が棲みつくようなミニ生態系を自分で作ろうというものだ。
開発した日本ナチュロック(株)の佐藤俊明さんの本業は、護岸工事された川に自然を呼び戻すため、コンクリートに多孔質な天然溶岩を埋め込むこと。ビオガーデンに使うのも同じ溶岩だ。
「石の穴に野草を差せば、土がなくても根がつき、苔が生まれ、やがて小さな虫が集まるんです。作り手の田舎の風景に似てくるのも面白くてね。私の田舎近くの静岡県三島の源兵衛川にもこれと同じ石を使ったけど、繁華街を流れてるのにゲンジボタルが舞うんです」

家と庭はひとつのもの―――と考えるイギリスが火付け役となってはじまったガーデニング・ブームだが、そろそろ「家と自然はひとつのもの」として考える、過渡期にきているのかもしれない。