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2008年7月25日

緑を復元する画期的サービス 『日本ナチュロック』 溶岩パネルが日本をかえる!







2008年7月 セオリーVol.4 2008 より一部抜粋

緑を復元する画期的サービス
『日本ナチュロック』
溶岩パネルが日本をかえる!
むき出しになっているコンクリートが、どれだけ景観や環境を破壊しているか、
いち早く気付いた男がいる。
あらゆる壁や護岸に、自然の生態系を取り戻す秘策とは――。

 排熱の増加や地表面のコンクリート化などによって気温が上昇する「ヒートアイランド現象」は、長らく都市部の問題となっている。これを解決すべく、東京都などでも屋上緑化を推進しているが、屋上よりもはるかに面積の多い部分、それはビルや河川の壁面だ。
この壁面の緑化に着目したのが、『日本ナチュロック』の代表取締役、佐藤俊明氏である。同社の主力製品はフィルムや金属など軽量、薄型の基板をベースに、多孔質天然溶岩石を複合した「ビオボード」と呼ばれる壁面のリフォーム資材。分かりやすく言えば「溶岩パネル」だ。
しかし、なぜ溶岩が緑化につながるのか?

すべては富士山麓の樹海から教わった
「ヒントは富士山の裾野に広がる青木ヶ原樹海なんです」
と語る佐藤氏は、富士山麓の自然あふれる山梨県富士吉田市で生まれ育った。巨大な樹海のベースは、土ではなく溶岩だ。幾度もの噴火を経て、大地を覆って冷え固まった溶岩に苔やシダが生息したのが、現在の樹海の起源である。
「子供の頃、走り回って遊んでいた林の地面も、水遊びした川の水辺の岩場もみんな溶岩でした。火山が噴火して生まれた溶岩は、実は日本の至るところに存在する。ところが溶岩にはいいイメージがない。使い道のない、いわば邪魔者扱いされてきた溶岩を、なんとか有効に使いたかったのです」
近年では北海道の有珠山や長崎県の雲仙・普賢岳、東京都の三宅島の噴火が記憶に新しいが、たしかに溶岩というと、危険を連想し、火山の排出物のような、ネガティブなイメージが先行する。ゴツゴツとした溶岩と緑はにわかに直結しにくいが、実は数ある石材のなかで溶岩は、植物の生育にこの上ない土台なのだ。
溶岩にはまるでスポンジのように、内部にまで無数の入り組んだ穴があいている。当然、体積あたりの表面積も大きくなるので、水や空気も多く含まれる。これが風雨にさらされるうちに、穴の中には様々な微生物や植物が住み着くようになる。するとやがて昆虫や小
動物が集まり、時間の経過とともにビオトープ(生物生息空間)が形成されていく。コンクリートや表面が滑らかな石では、生物が生息できるスペースがほとんどないので、こういった生態系は生まれにくい。
緑繁る青木ケ樹海は溶岩に生えた苔から始まり、樹海が生い茂るまでに成長した。火山国日本では、全国にこうした溶岩の緑地がいくつも存在する。溶岩をベースにした緑化は、日本の自然の原点の姿ともいえる。そもそも火山の噴火は自然の営みである。溶岩という自然の産物を人間の知恵で有効に活用したビオボードは、極めて自然に則した再利用だ。

コンクリート張りの川には人も生き物も寄りつかない
しかし、生物が育たないといっても、堅牢なコンクリートの構造物は、防災上、欠かせない資材であることには違いない。特に護岸などは、防災、治水対策の面でも必要不可欠である。
「私はコンクリート業界出身なので、その利用は十分に認めています。それにコンクリートで固めた護岸を解体するには莫大なコストがかかるだけでなく、廃材の処理問題や自然環境へ及ぼすダメージ、さらには地水面の安全性にも不安が生じます。そこで、コンクリート構造物の長所や機能を維持しながら、自然環境を取り戻すにはコンクリートを溶岩で覆えばいい!と発想したのが『ビオボード』の原点です」
「ビオボード」の第一の特徴は、元の構造物を壊さずに、自然生態系の回復と景観の回復が可能になるということだ。そして第二の特徴は仕上がりをデザインできる点にある。溶岩と溶岩の隙間に苔の胞子を練り込めば、早急な緑化を促すことができる。隙間を砂だけにすれば、植物が繁りすぎることもない。緑あふれるスペースにしたいのか、コンクリートを自然石の落ち着いたテクスチュアに変えて、緑はほどほどでいいのか。多様なニーズに柔軟に応えられるというわけだ。
日当たりや設置場所で違いはあるが、早ければ3ヶ月で苔などの植物が芽吹き、約1年で絨毯状に苔が密生した緑の壁が生まれる。といっても、意図的に植物の種を植えるわけではないので、その土地の気候風土に合致した自然そのものの緑の環境が生まれてくるのが大きな特徴だ。佐藤氏は言う。
「岸壁が汚ければ、人も寄り付かない。ゴミも捨てられやすい。過去、岸壁を緑化した川にはホタルが生息するようになったところもあります。人間、きれいな川にはゴミも捨てにくくなるものなのです。ただし、当社の製品は、あくまで、自然界の生物が暮らしやすい環境を提供すること。自然をコントロールするものではありません。施工後は自然にまかせるのが大前提です」

価値を認めてもらうまで20年かかった
建造物の壁面にコンクリートを選ぶりゆうとしては、塗装やタイルなどに比べてメンテナンスが楽だという側面があるが、汚れだけは避けられない。ビオボードの場合は、溶岩パネルの環境に見合った規模の植物しか生えないので、草刈りなどのメンテナンスに煩わされることも少ない。落書きなどをされる心配もなく、時がたてばたつほど周囲の環境にしっくりとなじむ。佐藤氏が続ける。
「真夏の炎天下にビオボードに覆われた壁面のそばに立つと、まるで日陰にいるような涼しさを感じることもあります」
これは溶岩の多孔質が大気中の湿気や熱を吸収するため。冬場は逆に溶岩内部の水分が蒸発し、乾燥を防ぐ効果があるので、夏も冬も過ごしやすさを生み出す。二酸化炭素の吸収や断熱、遮音といった効果もあり、ヒートアイランド現象の緩和や省エネにもつながる。いいことずくめのビオボードだが、販売当初から順風満帆だったわけではない。
「約20年前、最初はビオボードの前身にあたる、コンクリートに溶岩を埋め込んだブロック、『ナチュロック』が主力製品でした。これは石積みのような落ち着いた雰囲気を演出できるという評価はあったものの、植物の自然発生という点についてはあまり評価されませんでした」
と佐藤氏は語る。当時の日本は、バブル経済の真っ只中。環境への認識は高まりつつあったものの、まだまだ「他のものとの差別化を図る付加価値」としての認識がせいぜいだった。時間の流れとともに自然の生態系を作り上げるという、いわば悠長な考え方は異端視されていたという。
その後、幾多の試行錯誤を経て、垂直の壁面に貼り付ける「ビオボード」を開発したのが12年前。簡単な施工で既存のコンクリートを緑化できるようになったため、にわかに注目を集め始める。
’08年の4月26日には、環境配慮型の「エコパーキングエリア」として、リニューアルオープンした首都高速道路の代々木パーキングエリアの壁面にも「ビオボード」が採用されるまでになった。
「業務を縮小せざるを得ないなど、厳しい時代もありましたが、溶岩の活用は、人間を含めた生き物すべてにとってプラスになる。いつか必ず認めてもらえる!という信念で作り続けました。20年目にしてようやく時代に認めてもらえたんだと思います」と佐藤氏。価格は施工を含め1uあたり1万9,800円。その後の景観美やランニングコストの低さを考えれば、費用対効果の高いサービスといえるだろう。

 

 同社の取引はこれまで公共事業関連が中心だったが、今後は一般ユーザーにも門戸を開いていく計画だ。「ビオボード」なら家屋の壁面や腰板、庭先、ベランダなど、小さなスペースにも自然の生態系が息づくようになる。ベランダや庭ならそれほど大きな費用もかからない。
「ビオボード」は主にコンクリートを覆う資材だが、その後開発したのが、超軽量・超薄型のフィルムに溶岩のスライスを設置した「ビオフィルム」だ。これなら曲面の構造物や鉄、アルミ、プラスチック、木材などの壁面にも貼り付けることができる。塀や門扉はもちろん、ガーデニング資材や内装のインテリアとしてDIY感覚で応用が可能だ。
現在、同社では溶岩の多くをフィリピンから輸入しているが、日本は世界でも有数の火山国である。火山の噴火で被害を受けた地域もある。「三宅島は噴火後、溶岩や火山礫が島を覆い、いまも避難している人がいる。これらの溶岩を利用することで三宅島の産業復興や島民の方々の雇用の確保にも貢献できるのではないかと思っています。現在、三宅島では技術提携を結び、交流が続いています。
まだまだ全国には大量の溶岩が埋もれています。これからは北海道には北海道の溶岩といったように、その土地の溶岩を使った資材を開発し、よりいっそう地域の景観に溶け込む製品を作りたい。日本中の河川の護岸や高速道路の壁面を、緑に変えるのが私の夢です」(佐藤氏)
溶岩という眠れる資源を活用した「溶岩パネル」。すべての生き物に優しい壁面緑化は、少ない費用と労力で自然の恵みを享受することのできる、まったく新しいエコロジー・サービスなのである。

写真注釈:「『ナチュロック』が1985年に富士山6合目に採用されてから、国立公園内や河川、道路を中心に施工現場数は’08年3月現在で約1万500ヵ所(面積は265万u)」と佐藤氏
写真注釈:壁面すべてを「ビオボード」で覆った「溶岩ハウス」。適度に植栽ボックスを設け、シダ等をレイアウト。「施工後3年目ですが、ほとんどメンテナンスはしていません」(佐藤氏)
写真注釈:用途に応じて様々なタイプを完備。標準タイプの「ビオボード」は厚さ2cm、幅30cm、長さ110cmのボードの表面に40個ほどの溶岩が埋め込まれている
写真注釈:時間の経過とともに苔がびっしりと溶岩を覆い、小さなビオトープが誕生する。自然の営みにまかせた緑化は、人工的な緑化のような違和感がなく周囲の景観に溶け込んでいく
写真注釈:首都高速代々木PAの壁面には、ボードの上部に植栽ができるボックスを設けたタイプが採用された、ボックスには花などを植えれば、さらに華やかな印象になりドライバーの目を癒やす

写真注釈:市販の乗用車を「ビオボード」と「ビオフィルム」で覆ったPR用のクルマはイベントなどで注目の的。曲面にも使用可能な「ビオフィルム」は、ハサミやカッターで切断でき、汎用性が高い